2018年11月1~2日開催 ISCO 2018 国際バイクフィッティング シンポジウム in ドイツ報告

会場のAKADEMIE FRANZ HTZE HAUS

 

2018年11月1日より2日の日程にて、ドイツ・ミュンスター市においてgebioMized社主催のバイクフィッティングの国際シンポジウム第3回「ISCO 2018」が開催されました。ISCOとはInternational Symposium of Cycling Optimizationの略です。

今回はシンポジウム翌日11月3日に場所をオランダ・アペルドールン市の室内自転車競技場で開催されるワークショップであるエアロ講習にも参加。
2014年にRetulが主催したアメリカ・ロサンゼルスの室内自転車競技場でのエアロ講習以来4年ぶりです。これはまた別のブログにレポートしたいと思います。

過去2回開催されているgebioMized社主催のシンポジウム。私は第2回目の2015年に初めて出席し、他のシンポジウムとは違い、グループ単位でのワークショップが多くプログラムに組まれ、世界のバイクフィッターにとっては共通認識やより効果的なアセスメント評価方法、研究者の報告などが学びました。前回2015年の報告はこちらリンク

今回のシンポジウムでもとても多くの事を学んだわけですが、私のざっくりとした今回の印象としてはエアロ研究、クランク長、最新解析装置の紹介が主な議題であったと思いました。多くの研究者の講演、ワークショップが開催され、全部は紹介しきれないので備忘録として1名の講演者、2つのワークショップについてのレポートを書きたいと思います。

Jim Martin氏 クランク長とパフォーマンスの関係性を20年以上研究

今回は近年のクランク長とパフォーマンスとの関係の研究者で有名なアメリカ・ユタ大学のJim Martin氏の講演が決定していたことで、多くの参加者の関心を集めていました。私も講習でJim Martin氏の論文のクランク長とパフォーマンスについて説明させて頂いています。近年日本でもメディアで賑わせている短いクランク長。特に身体の柔軟性が低いライダーや、欧米人に比べ平均身長が低いライダーが多いアジア人にとっては非常に注目される議題であり、今回のシンポジウムでも高い注目度となりました。講演では多くの調査報告が発表され、結論として高いパフォーマンスを出すには低い空気抵抗のフォームを得る必要があり、その際ペダリング中の膝上死点と胴とのスペースを十分に開ける必要があるということでした。

特にトライアスロンやタイムトライアルなどエアロポジションではそれが重要ということです。170mm→155mmのクランク長は、パワーレシオでは約7%の違いがあるが、それはギアレシオではリアスプロケットに換算すると23T→24Tぐらいの違いということです。しかし実際のポジションの設定となると、クランクが短くなることによりサドルが上がるため、より高い位置よりペダル踏むことが容易になります。Martin氏はトレーニングジムのレッグプレスマシンを引き合いに出し、初動の膝を大きく曲げた状態より、膝を伸展させた状態の方が容易に踏むことができると説明。
これはホビーサイクリストだったらこれは肯定的に受け止めるべきだし、競技者であれば例とした155mmよりも長いものを使用する可能性が高いので、大きく気にする事でもありませんね。タイムトライアルではUCI規定もあり身長が低い選手ほど低い姿勢がとりづらく、不利になる傾向がありますが、クランク長を変えることにより改善する部分も多くあるかと思います。

クランクを短くし、サドルを上げると右図のようなペダリングサークルになる。具体的な動きの評価はモーションキャプチャ機器を使用し数字で表すのが良いですね。

クランクを短い物に変えることにより従来よりサドルを上げられ、しかも十分に楽に姿勢を低くなることで得られるメリットが、空気抵抗、心拍数、運動量の面で大きいようです。バイクフィッターにとってはライダーの柔軟性の評価をより正しく行うことが求められ、それによるライダーへの適切なアドバイスができるようになるかと思います。Martin氏はまたエアロフォームについても長年研究し現在、自転車競技のオーストラリア、イギリス、ニュージーランドの各ナショナルチームへ助言を行っているようです。

 

gebioMizedのSchade氏とLEOMOのSuzuki氏がType-Rのグラフの読み方を説明

次は最新デバイスの将来性として世界中のコーチの話題商品であるLEOMO社のワークショップが印象的でした。Suzuki氏の講演ではサドル上の骨盤の動きをグラフ化し個々のライダーの骨盤の動きとパフォーマンス関係性、gebioMizedのプレッシャーマッピングシステムを融合させてグラフ等を1画面で表示することで、ペダリング中のデッドスポットの解析や理解度を高めることができるため、非常に有効な機材だと思いました。講演後、LEOMOの加地氏にグラフの読み方や日本人選手でのデータについて色々聞くことができて大変勉強になりました。
骨盤を動かさないペダリングのデッドスポットの増加についてのグラフの読み取り方、上手な選手の骨盤の動きなどを色々聞けました。加地さんありがとうございます!
ただ翌日のエアロ講習では骨盤の動き減らしたライドでは乱気流を生まないためCdA値が低く、上半身の動きがあるとそれだけでも大きな空気抵抗値が確認されました。どこに着地点を持ってくるか?このあたりがコーチングとして差が出てくることろかなと思ったりしました。これもLEOMO Type-Rでないと発見できない点がありますね。
今後gebioMized社とのコラボレーションが楽しみなところです。今後も開発に意欲的なLEOMOには注目したいですね。

LEOMO Tyoe-Rの解析と読み方を学びます。

アセスメント評価方法について学びます。グライペル選手が被験者に!

南アフリカのスポーツ理学療法士Wendy Holliday氏によるワークショップ アセスメントの評価方法を学びます。

南アフリカのスポーツ理学療法士のWendy Holliday氏。身体アセスメントの評価方法についてのワークショップです。私のグループはエリートカテゴリーの女性レーサーを被験者として多くの情報を提供して頂きました。

バイクフィッティングではよりスピーディーに的確にライダーのコンデションを評価する必要があります。サイクリストの静的評価と動的評価の違いの確認、骨盤の前傾と左右股関節の均等性の評価方法と改善方法などを紹介。やはりできる限りの左右差修正は必要ですね。この女性レーサーを被験者としてちょっと変わった評価方法も学びましたが、ちょっとここでは紹介しづらいです(笑)。しかし今回も研修に行ったことで多くの事を吸収できたと思います。今後の講習やフィッティングで有益な情報が提供できるかと思いますので、楽しみにして下さい!私は2日目のこのワークショップに参加しましたが、初日はUCIワールドツアーチームのLottoチームのグライペルさんが被験者として参加しました。

余談ですが2018年チームスカイのクリス・フルームがサドルを変更。ロゴは隠されていましたが、gebioMized社のSLEAK 145です。実際に担当者に聞きましたよ。変更理由やポイントについても聞くことができました。

 

展示ブースにはBIKEFITの定番のフィッティング機材が

LEOMOの加地さんにType-Rで出されたグラフの読み方と、パフォーマンスの関連性についての説明を聞く私。

 

シンポジウム出席者のサインボード

 

会場はこんな感じです。

機材・フォームについて学びます。CdA値を減らす工夫などを学びます。

クリート位置について学ぶ

ISCO 2018の主催者一同 素晴らしい機会ありがとうございました。また参加します!

証明書と出席者バッチ。私はイエロージャージグループでした。

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