2022年6月27~29日開催 Science & Cycling 自転車学会 in コペンハーゲン・デンマーク報告

会場入り口のScience & Cycling バナー前の伏見

 

2022年6月28~29日にかけて、デンマーク、コペンハーゲン市で開催された自転車の学会「Science & Cycling」に出席してきました。
会場はホテル「CABINN Copenhagen」内のホールです。

こういった学会は競技者志向のコーチへの学会と捉えがちですが、必ずしもそうではなく、一般サイクリストへの対処に対するヒントも多くあります。バイクフィッターにとっても多くのヒントが得られます。

その前日に主催者側のワークショップに参加したため、タイトルには27日~としました。いずれにしてもコロナ禍での開催でしたが、事前準備と情報収集、そして主催者側の協力もありスムーズに約1週間の出張をこなすことができました。

2016年にもフランスでの同学会に出席した経験があるので、どういった趣旨で開催されているかは知っていました。最先端の自転車運動学の基礎研究と、コーチングやバイクフィッティングの情報などが学べる場です。学会での公用語は英語です。デンマークでの第2公用語は英語なので、困ることはないと思い、また新型コロナによるヨーロッパの入国制限が緩和されたの知ったこともあり、この学会が開催が発表された段階に参加を決意しました。毎回お会いするバイクフッターや、IBFI(国際バイクフィッティング協会)の会長などと顔合わせするためにも貴重な場です。
残念ながら私以外の他のアジア諸国からの参加者の顔ぶれはありませんでした。まだまだ新型コロナの影響が続き、出国に制限があるようです。日本はその中でも出入国ができるため、この機会を無駄にしたくありませんでした。私にとっても渡航は2019年以来3年ぶりなので楽しみでした。

ただし日本人にとってハードルになるのは、帰国時の現地から出国72時間以内のPCR検査陰性証明書の入手、スマホアプリの「MySOS」のインストールとその使用準備。それ以外は行動制限は無く、充実した出張になるように計画していきました。

Dr. Holiday氏のワークショップ。現役アマチュア選手を被験者として身体アセスメントの評価方法を指導します。

 

6月26日夕方に現地入り。思ったより暑いデンマーク。しかし日本の酷暑に比べれは気が楽です。

6月27日はDr. Wendy Holliday氏のワークショップ「Before the Bike: understanding the individual biomechanics」の講習に参加。 バイクフィッティングのアセスメントに関わる1日講習です。身体の可動域の評価方法を様々な視点から学び、適切なバイクフィッティングに繋げる方法を学びました。彼女は南アフリカ出身(現アメリカ人)のスポーツドクターで、これまでシンポジウムなどでは何回か受講した経験があります。聞きやすい英語発音を意識しているようです。毎回新しく実践的な情報が得られるので、知識に幅が広がります。また女性サイクリストの悩みや問題点、ケアなどを詳しく解説して頂けるので、90%男性の受講者にとっては、本当にためになる情報を得られます。この講習会になると私は年齢もそうなのですが、何回も参加しているベテラン受講者になります。英語で筋肉の部位などを理解しておけばスムーズに受講ができます。他の受講者が回答に困ると私に質問が飛んでくるパターンですね。(笑)

ホテルCABINN Copenhagenの学会会場の様子

さて翌日の6月28日から本番の学会がはじまりました。残念ながら制限があり詳しい学会内容については私から情報は出せません。
https://science-cycling.org/conference-2022/
上記がURLリンクになります。講演者名、発表内容など、その他について知ることができます。

学会は講演者のMarije Elferink- Gemserさんのスピーチからスタート!

毎回講演者が20分程のスライド映像を使用しながらスピーチを行います。そのスピーチの終了後、質問タイムが出席者に与えられ、疑問があれば挙手をして質問するシステムです。
名前は覚えていませんが、ベルギー・ゲント大学の方の毎回鋭い質問に対しては、講演者はやや困惑ぎみながらも、誠意のある説明で対応するなど常に緊張感がある学会でした。面白い調査や基礎研究など、集中して受講することができました。個人的にヨーロッパの7時間ぐらいの時差であれば、時差ボケは大丈夫。北米は半日の時差なのでさすがにキツいですが。。

私にとって印象に残った講演内容4つぐらい挙げておきます。
・選手育成の成功とその一方で、そのレベルに達しなかった選手のライフプランについて

・選手のパフォーマンス、疲労具合を予測する計算式の存在
・チームがレースにまつわるほとんどの情報を管理できるソフトウェア(アプリ)の存在。特に移動があるステージレースではホテルwifiパスワード情報や部屋わりなどの事前管理が一括して行え非常に便利になる
・低酸素(高地)トレーニングの効果について
 日本でも低酸素ルームでのトレーニング施設が増えているが、果たして科学者が集めたデータや見解によると・・・?

バイクポジションに関わる講演もありました。発表アプローチに違いがあれど、既に私が知っている情報以上のものは無かった印象です。
エアロ VS 快適性をどう判断していくか? このテーマは永遠でもありますし、ライダーの目的にもよるというのが総括ではあります。しかしそれを正しく判断する材料をバイクフィッターがどれだけ持ち合わせているかどうかだと思います。

さてこの学会開催中は1日中会場に缶詰状態でいたので、日中は観光する余裕はありません。しかし初日の夕飯はシクロワイヤードの綾野さんと、現地在住の日本人の方とお会いすることができて、夕食を楽しむことができました。

コペンハーゲン中央駅前にあるチボリ公園がツールドフランス前夜祭会場。観客人数も凄いですが、観客の平均身長の高さもあり、ステージがなかなか見れませんでした。(泣)雰囲気は十分に楽しめました。

学会最終日の後はコペンハーゲン中央駅前にあるチボリ公園で、ツールドフランス選手の紹介が行われる前夜祭が開催されました。夕方に帰国のための事前PCR検査の予約があったため、それを指定検査場で済ませた後、会場があるチボリ公園に行くと既に前夜祭が始まっており、ステージ近くは前にも後ろにも行けないくらいの人だかり。今年はデンマーク人選手9人がツールドフランスに出場するということで、それを応援したいデンマーク人たち。会場は超「密」の状態。東京都の小池知事がみたら発狂してしまいそうです。

その後一日の休息日を挟んで、ツールドフランスのプロローグとなります。

2022年ツールドフランス、プロローグタイムトライアルのコース試走中の選手達。機材やポジションのチェック。トライアスロンのような隊列で走行しています。試走ではロード用ヘルメットを使用する選手も見受けられます。

試走中のサガン選手。巨大ヘルメットが特徴です。エアロポジションについては、やや昔のフォーム。バイクセッティングはあまり煮詰めてない印象でした。

プロローグ本番。午後4時スタート。しかしすぐ雨が降り出しました。画像は2022年ツールドフランス大注目選手のファンアールト選手。コーナーからのリカバリが早く、素早くエアロフォームに切り替えてトップスピードに向かいます。

ヒルクライマーでもあるマイカ選手。コーナーの処理にミスをしたのか、まだ立ちこぎをしてスピードを乗せようとしています。他の選手に比べ、エネルギーの浪費、心拍を過剰に上げてしまう原因になります。細かいミスがタイムロスの原因になります。

日中は曇り空でしたが、夕方のプロローグスタート前から雨が降り出しました。雨具を持って行ったのでよかったですが、気温も下がり観戦するには厳しい条件になっていきました。しかしビール片手に陽気に応援するデンマークの人たち。選手一人一人に大きな声援を送っています。

私の観戦場所は、選手がスタートして第1コーナーの左カーブを過ぎた200mぐらいの場所。丁度選手がベースバーからエアロバーへポジションを移し、エアロポジションでありながら、トップスピードに至ってないところで観戦しました。ラインレースと違い何度も試走で選手が目の前を通過するので、本番も含め雰囲気を楽しめたと思います。

デンマークの子供載せ自転車。こんな自転車がたくさん走ってます。日本の歩道にはとてもフィットしませんね。市バス内から撮影

コペンハーゲン中央駅前の平日の朝の様子。

デンマークは自転車の普及率が高く、車が侵入できない自転車道も町中に整備されているおかげもあり、社会全体として自転車への理解も浸透していました。なんだかうらやましく思ってしまいます。日本でいう面白自転車にあたる、自転車の前にキャリアがついている電動自転車の普及率も高く、それを子供載せ自転車としたり、お年寄りを運んだり、物を運んだり自由な風土を感じました。滞在中は会話は英語で用が全て済みましたが、テレビ、標識や看板などは全てデンマーク語なので、かなり困った場面もありました。少しぐらいはデンマーク語の文法ぐらいは勉強するべきであったと反省。

またヨーロッパということで、Yahoo! Japanが使えませんでした。私のスマホアプリのブラウザ起動が自動的にYahoo!に連動しており、おかげで「MY SOS」アプリのブラウザが立ち上がらず、帰国前はかなり焦りました。しかしその時だけアプリを削除することで無事に解決しました。

1週間という短い期間の出張となりましたが、多くを学び吸収できたかと思います。また機会があれば学会やシンポジウムに参加していきたいです。
Keep learningの精神でいきます。

IBFI国際バイクフィッティング協会会員
サンメリットBIKE FITスタジオ
伏見 真希門(ふしみ まきと)

 

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