2019年9月16~17日開催 IBFI 国際バイクフィッティング協会会議 in タイ・バンコク報告
2019年9月16日から17日の2日間のスケジュールで、タイ・バンコク市にてIBFI国際バイクフィッティング協会(International Bike Fitting Institute 以下IBFI)のアジア地域の国際会議が開催されました。会場はバンコク国際空港からほど近いMeridien Suvarnabhumi hotelで行われました。
まずIBFIとはどういう組織から説明したいと思います。
IBFIはイギリスに拠点を置き、バイクフィッティング業界の世界標準を目指す国際組織です。
国際的に認められた認定制度を提供し、IBFIに訓練されたバイクフィッターを保護し、サイクリストが期待するスキルとサービスに分かり易くアクセスできるようにします。IBFIは非営利組織であり、世界のトップバイクフィッターとバイクフィットの専門家によって監督されており、業界をリードする組織と教育提供者(プロバイダー)によってサポートされています。
2019年9月現在、26か国、133名の認定登録者が在籍 ※IBFIサイトより
IBFI代表 Andy Brooke
ノッティンガム・トレント大学出身 運動哲学専攻
所属:UK Bike Fit
数々のフィッティングの資格を保有し、イギリス自転車ナショナルチームやバイオメカニクスに精通。自転車業界、スペインでのツアーガイド業の後、2015年よりイギリスに戻り、バイクフィッティングの教育、サービスを行う。また以前よりヨーロッパ各地で行われる、バイクフィッティングに関するシンポジウム、学会に出席し、講演を行い著名人と信頼関係を深め2015年にIBFIを結成する。
IBFIの会議は、これまでのシンポジウムや、学会などの研究者たちのリサーチや理論の発表という出席者が受け身という立場から、よりバイクフィッティングについて参加者のアイディア、情報の共有、学習を目的とした参加型という趣旨の会議となり、今回アジアで初開催となりました。
今回は事前アナウンスが1か月前だったこともあったにもかかわらず、アジア地域から多くの参加者、イギリス、アメリカ、オーストラリアからの参加者が顔を揃える形となりました。日本からは私、伏見と愛知県のサイクルショップ、バイクエッグの杉浦さんが参加しました。タイ側のホストはKwanchai氏が務め、素晴らしいロケーションと会場セッティングで無事開催されました。
初日はAndy Brooke氏、Kwanchai Nualchanchy氏、John Bennett氏のワークショップ、2日目はWinston Tam氏の講演、オーストラリアのSteve Hogg氏講演、Fredrick Martin Ilagan氏という構成になりました。
まずAndy Brooke代表がこの会議の趣旨についての話、世界的に統一性のある有用な知識の共有とIBFIに所属メリットと、クライアントのタイプ別のフィッティング方法と、「テクノロジーを超えたフィッティング」ついて講演しました。AI時代に移行するであろうこの分野に、何がAIにできて何かできないのか?そして継続的な知識の習得の重要性について語りました。
Kwanchai Nualchanchy氏はチェンマイのバイクショップオーナーであり、多くの競技者や顧客へのフィッティング経験を踏まえ、太ったサイクリストや小柄なサイクリストへの対処方法とパーツ選定など、具体例を挙げながら発表し、また参加者が各々の経験やテクニックについて議論し合いました。体重の多いサイクリストを、部位の太さなどをタイプ別に分け評価していく方法は非常に興味深く勉強になりました。
日本の講習会(Retul University、Guru Academy)で指導経験のあるWinston Tam氏のビジネスに関するスピーチは、これまでのシンポジウムで一切語られない、お金にまつわるビジネス的な話で、ユニークな彼のビジネス展開とマーケティング方法について語りました。
John Bennett氏はバンコク在住のイギリス人で、1980年代前半フランス・プジョーチームで3年程プロサイクリストとして活躍した経緯があり、現在はタイで陸上競技や自転車のコーチング事業を行っています。彼の議題は女性サイクリストへのバイクフィッティングで、ユニークな評価方法が大変盛り上がりました。多くの参加者がアイディアと経験を語り、私も多く学ぶ事があり、時間が足らないくらいでした。女性ライダーは男性フィッターに悩みを伝えづらいこと、体幹の弱さによる重心バランスの修正、月経が原因の体調変化による痛みの変移、ハイヒールを履く癖など日常生活に関わる姿勢が影響を与えることが理解されており、それに対する対処法が議論されました。9割以上という男性バイクフィッターの中で女性バイクフィッターの育成が急務である事など多くの課題があることが世界の共通認識であることが確認できました。
彼のワークショップでは女性サイクリストへの対処方法などをタイ人の若い奥様(熱心なサイクリスト!)を被験者として実践的に学びました。ウェイトを疑似筋肉としてバイクパンツに挟み込む方法などを駆使し、乱れたペダリングを簡易補正する検証方法は真新しいものであり、非常に参考になりました。
2日目はオーストラリアのSteve Hogg氏の講演です。
Steve Hogg氏のホームページ→リンク
1990年代後半からスクールを始めいわばこの業界のレジェンド。
彼のスクールは個人の技量に合わせ長期間のカリキュラムが組まれるなど、かなりハードな講習が受けられるスクールと知られています。
Steve Hogg氏の講演では解剖学などの重要性を説き、最近のトライアスロンでのクリートポジションの変化と有効性について説明。
またインソールの良し悪しについて説明。ペダリング中にも足の形は常に変化しており、特にヒールドロップ(かかとが落ちる極限の状態)では成型インソールでもうまく足がサポートできない事を解説。しかしヒールウェッジ→リンク
が有効な解決策とすることを説明。
またテクノロジー主導のバイクフィッティングへの危機感も説き、解剖学や運動生理学の知識もライダーを知る上では非常に重要な要素として学習し続けて下さいと助言を頂きました。
最後はフィリピンのFrederick Martin A.Ilagan氏
バイクフィッターとしては最近の方ですが、短期間に多くのスクールで修業、そしてSNSを有効に使いフィリピン市場での成功体験を説明。これには驚くとともに凄く参考になりました。正にニューウェーブですね!
アジアではスポーツバイク市場が急成長する中、バイクフィッティングに携わるフィッターも増え、より高いレベルのバイクフィッティングの知識の共有が、スポーツバイク文化を発展させていく上で急務になっています。
これからも定期的にシンポジウム、学会や会議に出席し新たな発見と国内にお伝えしていきたいと思います。
またバイクフィッティング事業をされている方や確かな知識を勉強したいとお考えの方は、サンメリット主催の講習会に参加をお勧めしますし、国際的な認定を受けたい方は IBFIのメンバーになられることをお勧めします。
IBFI International Bike Fitting Institute →リンク
※英語のサイトになります。
今後どの業界もそうですが、国際化の中に突入していきます。ショップ様でも近年は来店される外国人の方お客様の割合が増えてきていると思います。海外のお客様は駐在者や旅行者関係なく、事前に日本の情報を収集して来日してきます。海外のお客様は英語で収集できるあらゆるチャンネルから高評価のショップへ足を運ぶ傾向があり、それにより今後は今以上に経営に左右していくと予想されます。そのためにもショップ様は継続的な講習の受講と是非IBFIへ加盟して頂くことをお勧めします。こういう機会で、海外の同業界の方たちと友達になっていけるのも、私が海外の学会やシンポジウムに参加し続ける理由だと思います。違った文化、価値観を理解して大きな問題について話し合う。大変素晴らしい事だと思います。
最後に今回勇気を持って参加して頂いた愛知県バイクエッグの杉浦さんは、精力的に会議に参加して頂き、逐一内容確認しながら英語で行われる会議に参加される姿に感銘を受けました。今回は本当に大変だったと思いますが、大変実りのある会議だったと思います。しかし勇気ある行動は心から拍手を送りたいと思います!
サンメリットBIKE FITスタジオ
IBFI公認 Level4バイクフィッター
伏見 真希門(ふしみ まきと)
【アジア地域 IBFI Level4 の7名】
左から
中国(上海):Johnny Chong
韓国(ソウル):DongKeon Lee
台湾(台北):Winston Tam
日本:伏見 真希門
タイ(チェンマイ):Kwanchai Nualchanchy
フィリピン:Frederick Martin A. llagan
シンガポール:Timothy Lim