2018年11月3日開催 ISCO 2018 エアロシンポジウム in オランダ・OMNISPORTS室内自転車競技 報告

OMINISPORTS室内競技場外にある自転車の巨大オブジェ。一目で自転車競技場だとわかります。

ドイツ・ミュンスター市で開催されたISCO 2018の翌日の11月3日、場所をオランダ東部のアペルドールンに移し自転車のエアロポジションにおける空気抵抗についての講習を受けました。会場は最近建設されたというショッピングセンターの敷地内にあるOMNISPORTSと呼ばれるスポーツ複合施設です。

2014年にもアメリカ・ロサンゼルスで空気抵抗についての講習を受けたため、今回は2回目となります。私としてはこの4年間での技術進展よるCdA値の減少具合が最大関心事項でした。
2014年の講習についてはこちら→リンク
当時はCdA値が0.23以下がエリートトライアスリートが出すエアロポジションの成功値であり、0.20以下は相当の工夫が必要ということでした。さて今回はどうなるかが私自身最大の注目点でした。

今回は午前中のAndy Franconi氏による講義と、午後から2名のエリートトライアスリートが被験者になって頂き様々な実験を行っていきました。Maurice Clavel選手、Patrick Dirkmeier選手。2名ともgebioMizedのサポートを受け過去にCdA値を測定経験があり、アドバイスによる身体的な調整と経過をみて今回は彼らのバイクポジションを仕上げるということで、機材を含め微調整を行うということでした。Franconi氏はカナダのトラックチームのコーチでもあります。

OMINISPORTS自転車競技場。一周250m 観客席数、個室数など国際基準を十分満たす施設。いつでもオリンピック開催できる状態です。

OMINISPORTS室内競技場の気温、湿度、気圧などを専用ソフトウェアに入力し、トラックのホームとバックストレートの滑走面にセンサーを貼り付けGARMIN の無線式パワーメーター、wifi電波増幅器を使用して、実走するライダーからの情報をリアルタイムで収集し数値を算出するシステムで計測開始。CdA値がどのように変化していくのかをチェックしていきます。

ポジションを出す重要性について語るFranconi氏。エアロに関する10項目挙げるとすれば6つはポジションが大切と強調する。

現在のバイクフィッティングでは、エリートアスリートに対して、ロングではバイクパートの95%をエアロポジションで走り切ることを想定したポジションを作っていきます。従いそれだけエアロポジションが効率的で快適でなければいけないということです。この場合の「快適」というのはエリートアスリートであれば、「維持・安定」という意味で解釈した方が良いと思います。ライダーの実力差によるところなので、余裕をもって完走を目指すアスリートであればエアロポジションを取り続けられる「安定」できるポジションが有効です。

被験者のエリートトライアスリートPatrick Dirksmeier選手

被験者のエリートトライアスリートMaurice Clavel選手

あらかじめ理解して頂きたいのは今回の2名の選手は身長180cm前後、筋力、柔軟性も優れているため思い切ったフォームが可能であるということです。それぞれの選手のクランク長はDirksmeier選手170mm、Clavel選手172.5mmでした。

Franconi氏がライブデータについて説明する

初回の測定値は2名共CdA値0.21前後。これで十分良い数値なのですが。。ここで出席者が意見を出し合い、サドル、エアロバー、ヘルメットについて変更と、CdA値の「A」の表面積を減らすフォームの修正を行い、被験者の2名は徐々にCdA値を0.19台まで減らすことに成功。彼らもそのバイクセッティングに納得したようでとりあえず終了。これだけでも180km走れば6~7分のタイムを短縮することが現実的になってくるそうです。

ソフトのインターフェース画面 左側に実測値がライブ表示される

良いスコアばかり見ても仕方無いので、ここからベースバーのみを持ったCdA値測定、腰を揺らした安定しないフォームでの測定、巷にある都市伝説的な工夫を施しての測定など出席者の要望で様々な実験を行います。
・ベースバーのみを握った場合:0.33までスコアが上昇。彼らのような深いポジションでもロードバイクのドロップハンドルを握ったのと同等ぐらいのスコアまでCdA値が悪化。
・腰を揺らした走り方:0.22以上に悪化
・アームパッドを広げる:0.23以上に悪化
・ノーマルヘルメットに変更:0.21前後に悪化
・脚側面に気流を整えるためのフィン(ガムテープで作成)を取り付ける:0.20以上に悪化 (素材・形状によるものか?)
・その他色々な実験 エアロバー角度・タイプ・取り付け方、ウェア交換、エアロヘルメット+サングラスなど

講習最後になってくると、2名のライダーにも疲れの色がでてきます。それもそのはず、1測定につき42km/hペース、10周で行われるのでさぞ大変だったかと思います。しかも出席者は容赦なく提案するので、その都度ライダーが提案をこなす流れになります。本当にご苦労様でした。

今回の収穫としては、ポジションによる空気抵抗の変化の推移と、機材そのものの進化によるAlphamantis社の実測データに基づく生の意見、そして今後のバイクフィッティングへの還元がいくつか発見できる点がいくつかあったと思います。常に知識のアップデートは必要であり、時代の変化に柔軟に対応していきたいですね。

また機会があればこういった講習会に定期的に参加したいと思います。

サンメリットBIKE FITスタジオ
伏見 真希門(ふしみ まきと)

講習で使用されたウェア類

テストで使用されたエアロヘルメットの数々 アジア人にはこめかみが痛そうになるものばかり・・・

ワイヤレス・サドルプレッシャーマッピングシステムも試験導入。これは私の中では新鮮でした。センサーも問題なく動作していました。

 

脚側面に気流を整えるための工夫を施す。仮説では無く実際に実験できるところがイイですね。

 

おまけ この日は週末ということもあり、早朝はジュニアの講習とレースが行われていました。

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